国際大会の在留資格はどうなっている?
更新日:3 日前
FIFAワールドカップ・オリンピック・ラグビーワールドカップなど、世界規模のスポーツイベントが日本で開催されると、数万人規模の外国人が選手・スタッフ・報道関係者・観戦ファンとして日本に訪れます。それぞれの立場によって必要な在留資格・ビザが異なり、手続きを誤ると来日できないケースも生じます。
この記事では、外国人選手・コーチ・運営スタッフ・報道関係者・ボランティア・観戦ファンに至るまで、立場ごとに必要な在留資格・手続きを行政書士がわかりやすく解説します。菊陽町周辺にお住まいのJASMエンジニアの方が大会を観戦する場合の在留資格についても触れます。
スポーツ国際大会と在留資格の基本
日本で国際的なスポーツ大会が開催される場合、来日する外国人の在留資格は「目的」「立場」「報酬の有無」「滞在期間」によって大きく異なります。
特に重要なのが「プロ選手か否か」「報酬(賞金含む)を受け取るか否か」という区分です。この2点で、「興行(在留資格)」「特定活動(アマチュアスポーツ選手)」「短期滞在(査証免除を含む)」のどれが適用されるかが変わります。
スポーツ基本法第27条:国際競技大会における受入れの特別措置
スポーツ基本法第27条は「国は、国際競技大会の日本への招致・開催が円滑になされるよう、国際競技大会に参加する外国人の受入れ等に必要な特別の措置を講ずる」と定めています。東京2020オリンピックでは、この規定に基づき「特定活動48号」が設けられました。将来の大規模スポーツ国際大会でも同様の特別措置が設けられることが予想されます。
立場別・在留資格早見表
来日する外国人の立場ごとに、必要な在留資格・ビザをまとめました。スマホでご覧の場合、各カードの詳細は本文をご確認ください。
国の代表として来日する外国人選手(プロ・アマ問わず)
ワールドカップ・オリンピックなどの大会に、国の代表チームとして参加する選手。短期滞在または査証免除で入国できます。賞金・出演料は発生しないため特別なビザは不要です。
短期滞在
(または査証免除)
日本のクラブチームと契約するプロスポーツ選手
Jリーグ・Bリーグ等のプロクラブと契約し、リーグ戦に出場するプロ選手。報酬を受けるため「興行」ビザ(在留資格)が必要です。条件あり(後述)。
興行(2号基準)
外国人コーチ・監督・スポーツ指導者
日本のスポーツ団体・クラブに雇用され、継続的にコーチング・指導業務を行う外国人。「技能」ビザが必要。実務3年以上または国際大会出場経験が要件。
技能
外国人報道関係者(記者・カメラマン等)
外国のメディア機関から大会の取材のために来日する記者・カメラマン等。「報道」ビザが必要。または短期滞在(査証免除の場合はビザ不要)。
報道 / 短期滞在
大会運営スタッフ(IOC・FIFA等の派遣スタッフ)
国際団体が派遣する大会運営・技術スタッフ。活動内容・雇用契約の状況により「技術・人文知識・国際業務」または「特定活動」(大会特別措置)が適用される場合があります。
技人国 / 特定活動
観戦ファン・訪日旅行者
観戦を目的に訪日する外国人。多くの国は査証免除協定により最長90日(短期)の在留が可能。観戦期間が90日を超える場合や、就労を伴う場合は別途の手続きが必要。
短期滞在
(査証免除等)
外国人選手の在留資格
① 国代表として大会に参加する選手(短期滞在・査証免除)
ワールドカップ・オリンピック・アジア大会などの国際大会に自国の代表チームとして参加する外国人選手は、プロ・アマチュア問わず「短期滞在」または「査証免除(ノービザ)」で来日します。賞金や出場報酬が大会から直接支払われない国際大会の代表選手については、就労目的とみなされないためです。
日本は多くの国と査証免除協定を締結しており、これらの国の国民は短期滞在として最長90日(協定の内容により異なる)、ノービザで入国できます。
② 日本のクラブチームに所属するプロスポーツ選手(興行)
Jリーグ・Bリーグ・プロ野球など日本のプロクラブと雇用契約を結び、報酬を受けてスポーツの試合を行う外国人選手には、在留資格「興行」(2号基準)が必要です。以下の要件をすべて満たす必要があります。
要件 | 内容 |
① 契約相手 | 日本の公私の機関(プロクラブ・興行を行う法人等)と雇用契約を締結していること |
② 機関の要件 | その機関がスポーツの試合を事業として行う機関であること |
③ 報酬の要件 | 日本人選手と同等額以上の報酬を受けること |
④ 施設・日程の明示 | 試合施設の概要・滞在の合理性(試合日程等)が明らかであること |
アマチュア選手が日本のクラブで活動する場合:特定活動(告示3号)
興行を目的としない企業チーム(親会社の宣伝目的で設けたクラブ)に所属し、国際大会の出場経験があり月額25万円以上の報酬を受けるアマチュア選手は、「特定活動(告示3号)」が適用されます。出入国在留管理庁の公式情報でご確認ください。
外国人コーチ・指導者の在留資格(技能)
日本のスポーツ団体・クラブ・学校等と契約し、継続的にスポーツ指導を行う外国人コーチ・監督・トレーナーには、在留資格「技能」が必要です。以下のいずれかの実績が求められます。
区分 | 要件 |
実務経験ルート | 当該スポーツの指導に係る実務経験が3年以上あること。外国の教育機関でのスポーツ指導科目の専攻期間・報酬を受けて従事した期間を含む |
国際大会出場ルート | オリンピック大会、世界選手権大会、その他国際的な競技会(アジア大会・アジアカップなど大陸規模以上の大会)に選手として出場経験があること |
業務要件 | 日本の機関と契約し、そのスポーツの指導業務に従事すること。「スポーツ」は競技スポーツのほか生涯スポーツを含む |
なお、短期の親善試合・友好試合に招待コーチとして来日する場合で、報酬・賞金が発生しない場合は「短期滞在」で対応できることもあります。
外国人報道関係者・運営スタッフの在留資格
報道関係者(記者・カメラマン等)
外国のニュース機関・放送局・出版社に所属し、日本での取材・報道活動を行う外国人には原則として在留資格「報道」が必要です。ただし、査証免除協定の対象国の記者が短期(90日以内)の取材のみを行う場合は、短期滞在(ノービザ)での入国が認められる場合もあります。
大会運営スタッフ(IOC・FIFA等の派遣スタッフ)
国際スポーツ団体(IOC・FIFA・JOC等)が派遣する大会運営・技術・マーケティング・IT関連のスタッフについては、活動内容・雇用関係・滞在期間に応じて以下の在留資格が適用される場合があります。
「技術・人文知識・国際業務」:IT・マーケティング・通訳・国際業務等の専門的業務を行う場合
「特定活動」(大会特別措置):大会開催時に政府が特例的に設ける特定活動。東京2020では「特定活動48号」が設けられました(後述)
「短期滞在」:滞在が90日以内かつ就労目的でない(観察・視察等)場合
観戦ファン・訪日旅行者の入国手続き
スポーツ観戦を目的に訪日する外国人の多くは、「短期滞在」または査証免除(ノービザ)で入国します。日本は現在68の国・地域と査証免除(短期)の協定を結んでおり、対象国の国民は原則ビザなしで90日(または協定による期間)以内の観光・スポーツ観戦目的の滞在が可能です。
大規模スポーツ大会では訪日外客の急増に対応した特別措置が取られることも
オリンピック・ワールドカップ等の大規模大会では、大会期間中の査証審査の迅速化・電子査証(e-Visa)の拡充・入国審査の優先レーン設置など、政府が特別な受入れ体制を整えることがあります。また、スポーツ庁・観光庁・出入国在留管理庁が連携して外国人受入れを円滑化するための施策を取ることが、スポーツ基本法第27条に基づき求められています。
観戦目的で来日した外国人が90日を超えて滞在したい場合
査証免除で入国した外国人は原則90日以内の滞在となります。大会の試合期間に合わせて観戦しながら日本国内を旅行する場合でも、90日を超える見込みがあれば、事前にビザを取得する必要があります。在留期間の超過(オーバーステイ)は重大な違反であり、その後の日本への入国に大きく影響しますので注意が必要です。
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東京2020が作った前例:「特定活動48号」の意義
2021年に開催された東京2020オリンピック・パラリンピックでは、既存の在留資格では対応しきれない多様な関係者(組織委員会スタッフ・ボランティア・公式スポンサー企業スタッフ等)に対応するため、「特定活動48号」が新設されました。これは将来の大規模スポーツ国際大会の在留資格対応における重要な前例となっています。
CASE STUDY — 東京2020オリンピック
特定活動48号(オリンピック・パラリンピック関係者)の概要
対象者
国際オリンピック委員会(IOC)・国際パラリンピック委員会(IPC)・東京2020組織委員会および関連機関が公式に認定した関係者(選手を除く)
活動内容
オリンピック・パラリンピックに関係する業務(運営・技術・マーケティング・放送・セキュリティ等)
在留期間
大会準備期間から大会終了後の一定期間まで(法務省告示で期間を規定)
将来の大会への示唆
日本で次の大規模スポーツ国際大会が開催される際は、同様の特定活動告示が設けられると予想される。大会招致・準備段階から出入国在留管理庁との連携が必要
なお、特定活動は法務省告示によって種類が増減するため、大会の招致・開催が決定した際は必ず最新の出入国在留管理庁「特定活動」の最新情報を確認することが重要です。
JASMエンジニアと大会観戦の在留資格
すでに就労ビザ・永住・配偶者ビザをお持ちの方へ
菊陽町・熊本周辺在住のJASMエンジニアの方向け
菊陽町周辺にお住まいのJASMエンジニアや外国籍の在留者の方で、すでに高度専門職・技術・人文知識・国際業務・永住・配偶者ビザ等の在留資格をお持ちの場合、国内で開催されるスポーツ国際大会の観戦に際して特別な手続きは基本的に不要です。在留資格の在留期限の範囲内であれば、通常の生活の延長として国内での観戦・旅行を楽しめます。
ただし、在留期限が観戦予定の大会期間中に到来する方は、事前に更新手続きを完了しておくことが必要です。また、就労ビザをお持ちの方が大会期間中に長期不在(帰国)する場合は、在留資格の維持に影響がないかご確認ください。再入国許可(みなし再入国許可を含む)の範囲内での出国・入国については問題ありません。
大会を観戦するために一時帰国する外国籍の方へ
日本に在留中の外国籍の方が、日本で開催される大会を観戦するために一時的に海外に出国し、大会前に再入国する場合は、出国前に「みなし再入国許可」の有効期限(1年以内)を確認してください。1年を超えての出国は別途再入国許可が必要です。また、在留期限が近い場合は更新してから出国することをお勧めします。
スポーツ大会関係の在留資格申請:注意点と流れ
1
立場・活動内容の確認
まず「プロ選手か否か」「報酬・賞金を受け取るか」「滞在期間」「日本の機関との契約関係の有無」を確認します。これにより必要な在留資格が決まります。興行・技能・報道・特定活動・短期滞在のいずれかを判断します。
💡 「プロか否か」は公的な登録より、実際に「報酬を受けてスポーツを行うか」で判断されます。
2
必要書類の収集
興行ビザの場合:雇用契約書・試合日程・施設概要・報酬明細等。技能ビザの場合:実務経験証明書・または国際大会出場証明・雇用契約書等。大会特別措置(特定活動)の場合:国際団体の公式認定書類等。
⚠️ 大規模国際大会では書類の量が多く、外国語書類の翻訳・認証が必要な場合があります。早めの準備が重要です。
3
在留資格認定証明書(COE)の申請または査証申請
海外から来日する場合は、日本国内の招聘機関が在留資格認定証明書(COE)を取得し、外国人本人が海外の日本大使館・総領事館でビザ申請を行います。国際大会では複数名・複数国籍の対応が同時に必要になる場合があり、申請取次行政書士への依頼が実務上よく使われます。
4
審査期間に注意:早めの申請が鉄則
在留資格認定証明書の交付申請の審査期間は平均1〜3か月です。国際大会では試合日程が決まってから申請準備を始めると間に合わないケースもあります。試合予定の少なくとも4〜6か月前から準備を始めることをお勧めします。
5
大会後の在留資格の取り扱い
大会が終了した後も日本に在留し続ける場合は、在留資格の要件を引き続き満たしているかを確認する必要があります。特定活動(大会特別措置)は大会終了後に在留期間が終了するため、継続して在留する場合は別の在留資格への変更が必要です。
💡 大会終了後に日本で就労・生活を継続したい外国人は、興行・特定活動から技人国・高度専門職・特定技能等への変更申請が必要になります。
よくある質問(FAQ)
Q ワールドカップ・オリンピックに出場する外国人選手はどのビザで来日しますか?
国の代表チームとして参加する選手はプロ・アマを問わず、短期滞在または査証免除(ノービザ)で来日します。大会での出場自体が就労目的とはみなされないためです。一方、Jリーグ等の日本のプロクラブと契約し、リーグ戦に出場するプロ選手には「興行」ビザが必要です。この2つを混同しないことが重要です。出典:出入国在留管理庁「特定活動(アマチュアスポーツ選手)」
Q 外国人コーチを招聘したいのですが、すぐに来日させられますか?
在留資格認定証明書(COE)の審査期間は平均1〜3か月程度かかります。COE取得後に海外の日本大使館でのビザ発給手続きも必要なため、試合・シーズン開始の少なくとも4〜6か月前には申請準備を始めることをお勧めします。書類の不備があるとさらに時間がかかります。当事務所では技能ビザの申請サポートを行っています。
Q 日本で開催される国際大会の公式ボランティアとして参加する外国人は、どのビザが必要ですか?
ボランティアとして無報酬で大会に参加する外国人は、滞在期間が90日以内であれば原則として短期滞在(または査証免除)で対応できます。東京2020オリンピックでは、組織委員会の公式認定を受けたボランティアに対して大会特別措置(特定活動)が設けられた事例があります。将来の大会では開催決定後に政府から改めて告示・案内があります。
Q 日本在住の外国籍の私が、日本で開催される国際大会を観戦するには手続きが必要ですか?
すでに有効な在留資格をお持ちの方は、在留期限の範囲内であれば特別な手続きなしに国内での観戦が可能です。ただし、在留期限が観戦予定時期に近い場合は事前に更新手続きを完了してください。海外から日本に戻る場合は再入国許可(みなし再入国許可含む)の期限内であることをご確認ください。在留期限・更新時期についてご不安な方はお気軽にご相談ください。
Q 日本でラグビーW杯・サッカーW杯・オリンピックが今後開催される予定はありますか?
2026年7月現在、日本での開催が正式に決定している大規模スポーツ国際大会としては、2027年9月開幕予定のラグビーワールドカップ日本大会があります。サッカーFIFAワールドカップは2030年大会がスペイン・ポルトガル・モロッコ(一部試合はアルゼンチン・ウルグアイ・パラグアイ)での開催が確定しており、日本での開催ではありません。オリンピックについては2036年以降への招致活動が国内で議論されていますが、2026年7月現在、日本開催は正式決定していません。最新情報は日本オリンピック委員会(JOC)公式サイトでご確認ください。
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本記事は、出入国在留管理庁「特定活動」・「興行」・スポーツ庁・スポーツ基本法等の公式情報をもとに2026年7月9日時点で作成しています。在留資格の要件・特定活動の告示内容は随時変更されます。大規模国際大会では大会ごとに特別措置が設けられる場合があります。最新情報は必ず出入国在留管理庁の公式サイトでご確認ください。本記事は情報提供を目的としており、個別の法的アドバイスではありません。なお、2026年7月時点で日本でのサッカーFIFAワールドカップ開催は決定しておりません(2030年大会はスペイン・ポルトガル・モロッコで開催予定)。
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