事業者が知っておくべき特定技能制度の基礎知識
更新日:3 日前

特定技能制度は2019年4月に創設された、国内の深刻な人手不足分野への即戦力外国人材の受入れを目的とする在留資格制度です。2026年1月23日の閣議決定で対象分野が16から19分野に拡大しましたが、外食業では同年4月13日から新規受入が停止されるなど、制度は常に変化し続けています。
本記事では入管庁公式ページ・閣議決定資料・農林水産省の公式公表資料を確認した上で、①1号・2号の制度概要、②現行16分野の受入要件と業務内容、③新3分野の現状、④技能実習・育成就労との違い——を正確にまとめています。情報の更新が激しい分野ですので、申請の際は必ず入管庁の最新情報をご確認ください。
特定技能制度の概要——1号・2号の違いと共通要件
SPECIFIED SKILLED WORKER TYPE 1
特定技能1号
在留期間:通算5年(更新上限あり)
家族帯同:原則不可
要件:技能試験+日本語試験合格(技能実習2号良好修了者は試験免除)
雇用形態:直接雇用が原則(農業・漁業のみ派遣可)
支援:受入機関または登録支援機関による支援計画の実施が必要
全19分野が対象(うち外食業は受入停止中・新3分野は受入準備中)
SPECIFIED SKILLED WORKER TYPE 2
特定技能2号
在留期間:更新上限なし(永続的な就労が可能)
家族帯同:可能(配偶者・子)
要件:上位の技能試験合格+実務経験。1号から移行が基本
雇用形態:直接雇用(農業・漁業含む)
支援:支援計画の実施義務なし
2023年に11分野に拡大。介護と林業・木材産業は対象外(2026年9月時点)
共通の受入要件(全分野共通・出典:入管法・省令)
特定技能外国人を受け入れる機関(受入機関)は、①特定技能雇用契約の締結、②1号外国人への支援計画(2号は不要)、③所管省庁の分野別運用要領が定める基準(協議会への加入等)——をすべて満たす必要があります。また受入機関は入管庁への定期届出等の義務を負います(出典:入管庁特定技能制度ページ)。
現行16分野の受入要件と業務内容
2024年3月の閣議決定で追加された自動車運送業・鉄道・林業・木材産業を含む計16分野が現在受入可能です(ただし外食業は2026年4月13日から新規停止)。各分野の業務内容は入管庁公式の「各分野の仕事内容」ページ(令和8年最新版)をもとにしています。
ヘルスケア・生活サービス系(2分野)
分野①
介護
2号なし(介護は2号の対象外)
身体介護等(入浴・食事・排せつの介助等)およびレクリエーション実施・リハビリ補助等の付随業務。訪問介護は対象外。介護福祉士の資格取得で別在留資格への変更も可能。
特定技能2号なし 直接雇用 介護技能評価試験 日本語N4相当
分野②
ビルクリーニング
2号あり
建築物内部の床・壁・天井・窓・外壁・トイレ等の清掃業務。清掃の専門技術が必要。単純な清掃との区別は「建築物衛生法」の適用施設かどうかが目安。
2号あり 直接雇用 ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験
製造・工業・建設系(5分野)
分野③
素形材・産業機械・電気電子
情報関連製造業
2号あり
2022年に従来の3分野(素形材産業・産業機械製造業・電気電子情報関連産業)が統合された「工業製品製造業」分野。鋳造・鍛造・溶接・切削・プレス・塗装・プリント基板・半導体等の幅広い製造業務。業務区分は全10区分(2026年6月25日要領改正)。
2号あり 直接雇用 分野別技能試験
分野④
建設業
2号あり
型枠施工・とび・鉄筋継手・内装仕上げ・外壁仕上げ・建築大工・配管・建築板金・保温保冷・吹付ウレタン断熱・海洋土木工事等。他分野と異なり受入機関は「建設キャリアアップシステム」への登録が必須。
2号あり 直接雇用 CCUS登録必須
分野⑤
造船・舶用工業
2号あり
溶接・塗装・鉄工・仕上げ・機械加工・電気機器組立て・機械検査・工業包装等の造船・舶用工業業務。
2号あり 直接雇用
分野⑥
自動車整備業
2号あり
自動車の日常点検整備・定期点検整備・特定整備、およびそれに付随する基礎的な業務。分解整備は2級自動車整備士の資格が必要。
2号あり 直接雇用
分野⑦
航空業
2号あり
空港グランドハンドリング(地上走行支援業務・手荷物・貨物取扱業務等)および航空機整備(機体・装備品等の整備業務等)。育成就労の対象外分野(運用上の特殊性から)。
2号あり 直接雇用 育成就労対象外
農林水産・食品系(5分野)
分野⑧
農業
2号あり
耕種農業全般(栽培管理・農産物の集出荷・選別等)および畜産農業全般(飼養管理・畜産物の集出荷・選別等)。農業と漁業のみ派遣形態での就労が認められる。
2号あり 派遣可(農業・漁業のみ)
分野⑨
漁業
2号あり
漁業(漁具の製作・補修、水産動植物の探索、漁具・漁労機械の操作、水産動植物の採捕、漁獲物の処理等)および養殖業。農業と同様に派遣形態可。
2号あり 派遣可
分野⑩
林業
2号なし(2026年9月時点)
造林・間伐・伐採等の林業作業全般。2024年3月の閣議決定で追加された4分野のうちの一つ。特定技能2号の対象外(2026年9月時点)。
2号なし(現時点) 直接雇用
分野⑪
木材産業
2号なし(2026年9月時点)
製材・プレカット・合板・木材チップ等の木材製品の製造・加工業務全般。2024年3月追加の4分野の一つ。特定技能2号の対象外(2026年9月時点)。
2号なし(現時点) 直接雇用
分野⑫
飲食料品製造業
2号あり
飲食料品(酒類を除く)の製造・加工および安全衛生の確保に係る業務全般。食品工場・弁当工場・惣菜工場等が対象。外食業(飲食店での調理・接客)とは別分野であることに注意。
2号あり 直接雇用
サービス・インフラ系(4分野)
分野⑬
宿泊業
2号あり
宿泊施設におけるフロント・企画広報・接客およびレストランサービス等の宿泊サービスの提供業務。
2号あり 直接雇用
分野⑭
外食業
2026年4月13日〜新規受入停止中
飲食店・喫茶店等における調理・接客・店舗管理業務。2026年4月13日以降は新規の在留資格認定証明書交付申請(COE)が原則停止(在留者数が受入上限5万人に達する見込みのため)。既存在留者の更新・同一分野内転職は引き続き可能。再開のめど未定。
新規COE申請停止 2号あり(在留者のみ) 既存者の更新可
分野⑮
自動車運送業
2号あり
トラック・バス・タクシー等の自動車による旅客または貨物の運送業務。2024年3月追加。第一種・第二種運転免許の取得要件あり。育成就労の対象外分野(国内での免許取得の困難さから)。
2号あり 直接雇用 運転免許必須 育成就労対象外
分野⑯
鉄道業
2号あり
車両製造・整備・軌道整備・電気設備整備・駅での業務(運転を除く)等の幅広い業務。2024年3月追加。業務区分で運用が開始されている。
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2号あり 直接雇用
【重要】外食業の新規受入停止(2026年4月13日〜)
2026年4月13日以降、外食業の新規受入は原則停止中(再開未定)
農林水産省と出入国在留管理庁は2026年3月27日、外食業分野の特定技能1号の在留者数が受入上限(5万人)に達する見込みとなったとして、同年4月13日以降に受理された申請から原則停止とする措置を発動しました。2019年の制度開始以来、特定の分野で長期間の新規受入停止が行われるのは初めてです。
停止の影響と例外
停止されるもの:外食業分野の特定技能1号の新規の在留資格認定証明書(COE)交付申請(2026年4月13日以降に受理された申請から)
継続可能なもの(停止されないもの):
①既存の外食業特定技能1号在留者の在留期間更新、②同一分野内での転職(所属機関変更)、③技能実習2号修了者・特定活動在留者からの特定技能1号への移行(一定の経過措置を満たす場合)、④外食業特定技能1号から特定技能2号への移行(試験合格等が前提)。
政府は在留者数に一定の空きが生じれば受入再開を検討するとしていますが、2026年9月時点で再開のめどは立っていません(日本経済新聞2026年8月報道より)。
外食業界の採用戦略の転換点
外食業での特定技能新規採用が止まった中、代替手段として①飲食料品製造業(分野⑫)での採用(工場・加工部門)、②技人国(技術・人文知識・国際業務)での幹部候補採用、③育成就労制度(2027年4月〜)での採用準備——などが注目されています。詳細は開田(ひらきだ)行政書士事務所にご相談ください。
新たに追加された3分野(2026年1月23日閣議決定・受入準備中)
新3分野は2026年9月時点で受入不可(2027年頃受入開始予定)
2026年1月23日の閣議決定により以下の3分野の追加が決定しましたが、技能試験・受入基準等の整備が進められており、実際の受入開始は2027年頃の見込みです。2026年9月時点では採用・申請はできません。なおリネンサプライ分野の要領別冊は2026年6月1日に制定済みです(入管庁公式ページ確認)。
追加予定3分野(2027年頃受入開始予定)
追加分野①
リネンサプライ
要領別冊 2026.6.1制定済み
ホテル・病院・介護施設等向けのシーツ・タオル等リネン類の洗濯・仕上げ・補修・納品管理等の業務。深刻な担い手不足を背景に追加決定。要領別冊は制定済みだが技能試験等の整備が引き続き進められている(入管庁2026年6月1日公表)。
受入準備中 2027年頃開始予定
追加分野②
物流倉庫
整備中
倉庫内での荷役・ピッキング・仕分け・梱包・在庫管理・入出庫管理等の業務。EC(電子商取引)拡大による物流需要増加と深刻な人手不足を背景に追加決定。
受入準備中 2027年頃開始予定
追加分野③
資源循環(廃棄物処理等)
整備中
廃棄物の収集・運搬・選別・処理・リサイクル等の資源循環に係る業務。2050年カーボンニュートラルの推進とともに業界の人手不足が深刻化していることを背景に追加決定。
受入準備中 2027年頃開始予定
特定技能・技能実習・育成就労の違い徹底比較
比較項目 | 特定技能 (1号・2号) | 技能実習 (〜2027年3月頃まで) | 育成就労 (2027年4月〜施行予定) |
制度の目的 | 日本の人手不足分野への即戦力人材の確保 | 技能移転による国際貢献(建前)。実態は労働力確保として批判 | 人材育成・確保を明確化(特定技能1号への接続が前提) |
在留期間 | 1号:通算5年 2号:更新上限なし | 1号:1年、2号・3号:最長5年(計) | 原則3年(その後特定技能1号へ移行) |
家族帯同 | 1号:不可 2号:可 | 不可 | 不可 |
転職(同一分野内) | 可(届出のみ) | 原則不可(人権問題として批判) | 条件付き可 (一定期間経過後・同一分野内) |
対象分野・職種 | 現行16分野(+準備中3分野) 幅広い業務に従事可能 | 85職種156作業(細分化) 指定作業以外は原則不可 | 特定技能19分野から 航空・自動車運送業を除く17分野 |
試験・要件 | 技能試験+日本語試験 (技能実習2号修了者は試験免除) | 技能検定基礎級・随時3級等 日本語はN5相当が多い | 入国時N5相当→修了時N4相当 技能検定随時3級が目標 |
受入機関の義務 | 1号:支援計画の実施 2号:なし 協議会加入 | 監理団体による監理 技能実習計画の認定 | 監理支援機関による監理 雇用管理・転籍制限の遵守 |
永住許可との関係 | 1号の在留期間は原則算入外 2号・特定活動での期間が算入される場合あり | 原則算入外 | 制度設計上は特定技能1号→2号→永住という 長期キャリアパスが想定 |
2027年以降の扱い | 継続(分野拡大・制度改善) | 廃止予定 (育成就労への移行) | 新設・施行 (技能実習の後継制度) |
育成就労制度(2027年4月1日施行予定)の概要
2024年6月の法改正により創設された育成就労制度は、技能実習制度の廃止に伴い2027年4月1日施行が予定されています(出典:入管庁公式サイト)。最大の制度目的の変化は「国際貢献・技能移転」から「日本の人手不足分野での外国人材の育成・確保」への転換です。
特定技能との接続パス
育成就労制度は特定技能1号への移行を前提とした制度設計になっています。
育成就労(3年)→ 技能検定随時3級+日本語N4合格 → 特定技能1号(最長5年)→ 特定技能2号試験合格 → 特定技能2号(更新上限なし・家族帯同可・永住可能性)
この一本のキャリアパスが制度として明文化されたことで、外国人材が長期的に日本で定着・キャリアを積める環境が整備されつつあります。
技能実習との主な違い
①転籍(転職)の自由化:技能実習では転職が原則不可でしたが、育成就労では一定期間(分野により1〜2年)経過後に同一分野内の別企業への転籍が本人意向で可能になります。
②手数料の適正化:送出機関に外国人が支払う手数料を月給の2ヶ月分までとし、超過分は受入機関または監理支援機関が負担するルールになります。
③日本語能力要件の新設:入国時にJLPT N5相当以上が必要となり、在留中にN4相当(日常会話レベル)への到達が目標とされます。
育成就労の対象は17分野(特定技能19分野から「航空」「自動車運送業」を除く)
育成就労の対象分野は、特定技能の19分野から「航空」(制度設計の特殊性)と「自動車運送業」(国内での運転免許取得が必要で育成になじまない)を除いた17分野です。これらの2分野は特定技能のみで受入が可能となります(出典:複数の実務専門家解説・2026年9月確認)。
既存の技能実習生はどうなる?
2027年4月1日の育成就労制度施行時点で在留している技能実習生は、技能実習契約が満了するまで継続して技能実習を行うことができます。ただし育成就労制度施行後に新規で技能実習を開始することはできなくなるため、受入機関は2027年4月以降の受入計画を育成就労制度に切り替える準備が必要です(出典:複数の入管業務専門家解説)。
よくある質問(FAQ)
Q 技能実習2号を修了すれば特定技能試験は免除されますか?
はい、原則として免除されます。ただし移行できる分野は技能実習で従事した職種と関連のある特定技能の分野に限られます。技能実習の職種と異なる分野の特定技能に移行する場合は、その分野の技能試験に合格する必要があります。なお日本語試験については、技能実習2号を良好に修了した場合でも免除されず、特定技能の日本語試験への合格が必要です(出典:入管庁公式ページ「外国人の方」)。
Q 登録支援機関とは何ですか?必ず利用しなければなりませんか?
登録支援機関は、特定技能1号外国人への支援業務(事前ガイダンス・住居確保・生活オリエンテーション・日本語習得支援・相談・苦情対応・定期面談等)を受入機関から委託される機関です。受入機関は特定技能1号外国人への支援計画を策定・実施する義務がありますが、その実施を登録支援機関に委託することで義務を果たすことが可能です。委託は義務ではなく、受入機関が自ら支援を行うことも可能です。ただし小規模な受入機関では支援業務の負担が大きいため、登録支援機関への委託(月額2〜3万円程度)を選択するケースが多いです。
Q 特定技能外国人は家族を日本に呼べますか?
特定技能1号では原則として家族帯同ができません。特定技能2号に移行すると配偶者と子を家族滞在ビザで呼ぶことが可能になります。なお特定技能外国人自身が「家族滞在」ビザで在留していた場合、家族滞在ビザでは就労が原則不可であるため注意が必要です。家族帯同のない長期就労を可能にするためにも、特定技能2号への移行をキャリアパスとして計画することが重要です。
Q 熊本県(菊陽町周辺)で特定技能の外国人を採用したい場合、どこに相談すればいいですか?
開田(ひらきだ)行政書士事務所では、特定技能ビザの申請・分野別要件の確認・登録支援機関の案内・技能実習から特定技能への移行手続きサポートを行っています。熊本県内では台湾積体電路製造(TSMC)菊陽工場の進出以来、外国人雇用の需要が高まっており、特定技能の相談件数も増加しています。ご相談受付中・年中無休・オンライン対応可です。お気軽にご連絡ください。
特定技能ビザ・外国人雇用のご相談
特定技能申請・技能実習から特定技能への移行・登録支援機関のご紹介は開田(ひらきだ)行政書士事務所へ。
お問い合わせ 090-2713-7500
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【情報の正確性・出典について】
本記事の各分野の業務内容は入管庁「各分野の仕事内容」ページ(令和8年最新版)を、分野数・制度概要は入管庁特定技能制度ページ(2026年9月22日確認)・2026年1月23日閣議決定資料をもとにしています。外食業停止措置は農林水産省・入管庁の2026年3月27日付公表資料から確認しました。リネンサプライ分野要領別冊の2026年6月1日制定は入管庁公式ページで確認済みです。新3分野の受入開始時期(2027年頃)は入管庁公式ページの情報に基づく見込みであり、変更の可能性があります。育成就労制度(2027年4月施行予定)の内容は2024年6月改正法・2026年1月23日閣議決定資料に基づきます。特定技能制度は変更が頻繁なため、申請前に必ず入管庁の最新公式情報をご確認ください。本記事の内容は2026年9月22日時点の情報に基づくものであり、個別の法的アドバイスではありません。
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