知らないと損をする。遺言の種類について
更新日:3 日前
「遺言書を書いておきたいけど、どの種類が自分に合っているかわからない」——そのような方のために、本記事では遺言書の3種類の違いをわかりやすく解説します。
遺言書には①自筆証書遺言・②公正証書遺言・③秘密証書遺言の3種類があり、作り方・費用・法的確実性・手続きの難しさがそれぞれ大きく異なります。また2020年7月からは「自筆証書遺言書保管制度」が始まり、法務局に遺言書を預けられるようになりました。
遺言書は、書いた後に放置するのではなく、正しく作成し・正しく保管することで初めて意味を持ちます。この記事で3種類の特徴を理解し、ご自身の状況に合った遺言書選びの参考にしてください。
遺言書とは——なぜ必要か?作らなかった場合のリスク
遺言書(いごんしょ、ゆいごんしょ)とは、遺言者が自分の死後の財産の処分や家族へのメッセージを記した文書です。民法に定められた方式を満たすことで法的効力を持ちます。
遺言書がない場合、財産は法定相続分に従って分割されます。多くの場合これで問題ないように見えますが、以下のような場合には遺言書がないことで深刻なトラブルが発生します。
遺言書がない場合に起きやすいトラブル
①内縁の配偶者・事実婚パートナーには相続権がなく、財産を残せない。②長年介護した子どもも他の兄弟姉妹と同じ相続分になる(寄与分を主張しても争いになりやすい)。③特定の子ども・孫に事業を継がせたいのに全員で等分になる。④海外在住の相続人がいて遺産分割協議が困難。⑤不動産を共有にするとその後の売却・管理で兄弟間に争いが起きやすい。
遺言書は「財産が多い人だけが書くもの」ではありません。配偶者や特定の人に確実に遺したい財産がある方・内縁関係や事実婚の方・子どもがいない方・再婚家庭の方・家族に介護負担をかけた方——あらゆる状況の方に遺言書は意味を持ちます。
①自筆証書遺言——自分で書く。費用ゼロだがリスクあり
普通方式 / 第一種
自筆証書遺言(じひつしょうしょいごん)
遺言者が全文を自分で手書きする。費用ゼロで最も手軽だが、要件を間違えると無効になるリスクがある。
費用
無料
(法務局保管は3,900円)
証人
不要
一人でいつでも書ける
検認
原則必要
法務局保管なら不要
メリット
費用ゼロ:紙とペンがあれば今すぐ書ける
一人で完結:証人・公証人が不要。秘密を保てる
何度でも書き直せる:最後に書いたものが有効
法務局保管制度(2020年〜):紛失・改ざん防止、検認不要
デメリット
要件ミスで無効:日付・氏名・押印の欠如や財産目録の手書き漏れで無効に
紛失・改ざんのリスク:自己保管では相続後に見つからない・破棄されることも
検認手続きが必要:相続開始後に家庭裁判所での検認が原則必要(手間・時間がかかる)
内容の正確性が保証されない:法律的に問題ある表現でも気づかない
作成要件(民法第968条)
全文自筆(手書き):遺言書の本文は全文を遺言者本人が手書きしなければならない。ワープロ・代筆は不可。
財産目録:2019年1月の民法改正により、財産目録のみパソコン作成・通帳コピー等が認められるようになった。ただし各ページに署名・押印が必要。
日付の記載:年月日まで正確に記載。「〇〇年〇月吉日」などは無効。
氏名の自署:遺言者本人が署名(フルネームが原則)。
押印:認印でも可だが、実印の使用が推奨される。
特に注意:書き損じを修正する場合は、民法の定める訂正方法(変更箇所に押印し、欄外に「×字削除、○字追加」と記載して署名する)に従う必要があります。修正液・二重線だけでは無効になることがあります。
②公正証書遺言——公証人が関与。法的に最も確実
普通方式 / 第二種
公正証書遺言(こうせいしょうしょいごん)
公証役場で公証人が作成する最も確実な遺言書。費用はかかるが、法的無効のリスクがほぼゼロ。
費用
2〜10万円程度
財産額による(公証人手数料令)
証人
2名以上必要
相続人・受遺者は不可
検認
不要
すぐに執行できる
メリット
法的に最も確実:公証人が法律の専門家として要件を確認。内容の不備で無効になることがない
検認不要:相続開始後すぐに執行できる。家裁の手続きが不要
原本が公証役場に保管:紛失・改ざんのリスクがない。再交付も可能
自書が困難な方でも作成可:病気・高齢で手が不自由でも公証人が代筆(口授)できる
遺言執行がスムーズ:金融機関等でも受け入れられやすい
デメリット
費用がかかる:財産額に応じた公証人手数料が発生(2〜10万円以上)
証人2名が必要:相続人・受遺者・未成年者は不可。証人の手配が必要
公証役場に出向く必要がある:通常は本人が公証役場に行く(出張公証も可能だが費用が増す)
内容が証人に知られる:証人が立ち会うため、内容の秘密保持が難しい
作成手順(民法第969条)
財産の整理・相続させたい内容を決める(行政書士等に相談すると作成がスムーズ)
公証役場に事前相談・予約(戸籍謄本・不動産登記簿謄本・固定資産評価証明書等を持参)
公証人が遺言書の案を作成。内容を確認する
証人2名以上の立会いのもと、公証役場で遺言者が内容を口授(こうじゅ)・確認・署名・押印
公証人が署名・押印して完成。原本は公証役場が保管、正本・謄本が遺言者に交付される
費用の目安:公証人手数料は財産価額1,000万円の場合は約2万3,000円、3,000万円の場合は約3万9,000円、5,000万円の場合は約4万3,000円(公証人手数料令第9条別表)。行政書士に依頼する場合は別途報酬が発生しますが、書類の整備・証人の手配・公証役場との打ち合わせをサポートしてもらえます。
③秘密証書遺言——内容を秘密にしたい場合
普通方式 / 第三種
秘密証書遺言(ひみつしょうしょいごん)
内容を誰にも知られずに公正証書遺言に近い効力を持たせたい場合の方法。実務上ほとんど使われない。
費用
1万1,000円程度
公証人手数料(一律)
証人
2名以上必要
内容は証人に非公開
検認
必要
家庭裁判所での検認が必須
メリット
内容の完全な秘密保持:公証人・証人にも内容を知られない
ワープロ作成も可:自筆でなくパソコンで内容を作成しても可。署名・押印は必要
存在は公証役場が証明:「この日付にこの人物が遺言書を提出した」ことは公証人が証明する
デメリット
内容の不備でも気づかれない:公証人が内容を確認しないため、記載ミスがそのまま残る可能性
検認が必要:相続開始後に家庭裁判所での検認が必要(公正証書と違い手間がかかる)
実務上ほとんど使われない:内容秘密→自筆証書で法務局保管の方が手軽でコストも安い
手続きが複雑:公正証書遺言に比べ費用的メリットも少ない
作成手順(民法第970条)
遺言書を作成し、封筒に入れて封印(遺言書に使った印を封印に使用)
公証役場に持参。公証人・証人2名以上の前で「自分の遺言書である」と申述
公証人が日付・申述内容を封書に記入。遺言者・証人・公証人が署名・押印
封書は遺言者が持ち帰る(公証役場には保管されない)
秘密証書遺言は「内容を秘密にしたい、かつ存在を証明したい」という場合に使われますが、現在は自筆証書遺言を法務局に保管することで同様の目的が達成できるため、実務上選択されることは稀です。
3種類を一覧比較テーブル
比較項目 | ✏️ 自筆証書遺言 | 🏛️ 公正証書遺言 | 🔒 秘密証書遺言 |
作成者 | 遺言者本人(全文手書き) | 公証人が作成(口授) | 遺言者本人(ワープロも可) |
費用 | 無料(法務局保管は3,900円) | 公証人手数料2〜10万円以上 | 公証人手数料 約1万1,000円 |
証人 | 不要 | 2名以上必要(相続人等は不可) | 2名以上必要 |
公証役場 | 不要(保管利用時は法務局) | 必要 | 必要(封書持参) |
内容の秘密保持 | 可(自己保管の場合) | 証人に内容が知られる | 可(最も秘密性が高い) |
無効リスク | 高い(要件ミスで無効) | 極めて低い | 高い(内容確認なし) |
原本の保管 | 自己保管または法務局 | 公証役場が保管 | 遺言者が持ち帰る |
相続開始後の検認 | 原則必要(法務局保管なら不要) | 不要 | 必要 |
体が不自由でも作成可 | 署名できれば可 | 可(口授でOK) | 署名できれば可 |
実務上の利用頻度 | 多い | 最も多い | ほとんどなし |
おすすめの方 | 費用をかけたくない・すぐ書きたい方 | 確実性を最重視する方 | 特別な事情がある場合のみ |
▶ お気軽にご相談ください(年中無休 9:00〜20:00)
お電話:090-2713-7500 / LINEで相談する / お問い合わせフォーム
法務局の遺言書保管制度(2020年7月〜)
2020年7月10日から「自筆証書遺言書保管制度」が始まりました。自筆証書遺言の最大の弱点であった「紛失・改ざん・検認の手間」を大幅に解消できる制度です。
2020年7月10日スタート
自筆証書遺言書保管制度——メリットと手順
制度の主なメリット
①紛失・改ざんを防止:法務局(遺言書保管所)が原本を保管
②家庭裁判所の検認が不要:相続開始後すぐに利用可能
③書式の形式チェック:保管申請時に法務局職員が書式の基本的な確認を行う
④通知制度:相続開始後に相続人・受遺者等に保管の事実を通知するサービスあり
利用の手順
①自筆証書遺言を作成(要件を満たした手書きの遺言書)
②管轄の法務局を確認(遺言者の住所地・所有不動産所在地等の法務局)
③予約して持参(本人確認書類・手数料3,900円が必要。本人限定・代理人不可)
④法務局が書式を確認して保管(内容の法的適否までは確認しない点に注意)
法務局は「形式チェック」のみ——内容の法的妥当性は確認しない
法務局の保管申請時に行われるのは、日付・氏名・押印の有無などの書式上の基本チェックのみです。遺言の内容が法的に有効かどうか・遺留分を侵害していないかどうか・財産の特定が適切かどうかなどは確認されません。内容の適切さを担保するには、行政書士等の専門家によるチェックが別途必要です。
どの種類を選ぶべきか——状況別判断基準
結論として、最も多くの方にお勧めできるのは公正証書遺言です。費用はかかりますが、法的な確実性が最も高く、相続開始後の手続きが最もスムーズです。
CASE 1
財産の価値・量にかかわらず、確実に意思を残したい。相続でもめたくない。相続人・受遺者に負担をかけたくない。
→ 公正証書遺言
CASE 2
費用をかけずにまず遺言書を書いてみたい。財産がシンプルで、内容も単純。法務局の保管制度を利用する予定。
→ 自筆証書遺言(法務局保管)
CASE 3
病気・高齢で手が不自由で、自筆での遺言書作成が難しい。
→ 公正証書遺言(口授で対応)
CASE 4
遺言書の内容を誰にも知られたくない(家族・相続人に対しても)。ただし費用・手間はかけても構わない。
→ 自筆証書遺言(法務局保管)
CASE 5
不動産・事業・多額の金融資産など、複雑な財産を含む遺言。相続人間でもめることが予想される。
→ 公正証書遺言(専門家に依頼)
CASE 6
まずはドラフトを自分で書いて、後でプロに見てもらいたいという段階的なアプローチ。
→ 自筆→専門家チェック→公正証書化
「自筆でまず書いて、後で公正証書にする」という段階的なアプローチも有効
まず自筆証書遺言を作成して法務局に預けておき、後で内容を精緻化して公正証書遺言に作り直す——というアプローチも現実的です。遺言書は何度でも作り直せます。最も日付が新しいものが有効です。「完璧な遺言書を書こうとして先延ばしにする」より、まず書いておくことの方が大切です。
遺言書の書き方で注意すべきポイント
特に自筆証書遺言で起きやすい、無効になる原因と対策です。
日付が不正確・不明確
「令和○年○月吉日」「○月ごろ」などの曖昧な日付は無効。年月日を正確に記載する必要があります。
✅「令和○年○月○日」と正確に記入
財産の特定が不十分
「預金すべて」「不動産を長男に」だけでは特定できず争いの原因に。不動産は所在地・地番まで正確に記載。
✅ 登記簿謄本の記載に沿って正確に記載
遺留分を無視した内容
法定相続人には遺留分(最低限の相続分)が保障されています。遺留分を侵害する遺言は遺留分侵害額請求の対象に。
✅ 遺留分を考慮した内容にするか、付言事項で理由を説明
氏名・押印の漏れ
署名がない、押印がない遺言書は無効。認印でも可ですが、実印の使用が後々の信頼性向上につながります。
✅ フルネームの署名と押印を忘れずに
共同遺言(二人で一通)
夫婦が「二人の遺言として」一通の遺言書を作ることは法律上禁止されています(民法第975条)。
✅ 必ず一人一通ずつ別々に作成する
遺言執行者を指定しない
遺言執行者がいないと、相続人全員の同意が必要になり手続きが遅延することがあります。特に認知・相続廃除には必須。
✅ 信頼できる人物または行政書士を遺言執行者に指定
よくある質問(FAQ)
Q 遺言書は何歳から書けますか?
満15歳以上で意思能力があれば遺言書を作成できます(民法第961条)。ただし認知症などで意思能力がない状態での遺言は無効になる可能性があります。「いつか書こう」と先延ばしにせず、判断力がしっかりしているうちに作成することが重要です。
Q 一度書いた遺言書を変更・取り消すことはできますか?
はい、遺言書はいつでも取り消し・変更できます。複数の遺言書がある場合は、最も日付が新しいものが有効です(前の遺言書と矛盾する部分は撤回されたものとみなされます)。ただし、公正証書遺言を自筆証書遺言で取り消す場合は、「公正証書遺言を取り消す」という明確な意思表示が必要です。法務局に保管した自筆証書遺言を変更する場合は、保管の撤回手続きが必要です。
Q 遺言書に「付言事項(ふげんじこう)」は書けますか?
はい、法的効力はありませんが、遺言書の末尾に家族へのメッセージや遺言の理由を「付言事項」として書くことができます。「なぜ長男に多く相続させるのか」「介護への感謝」「家族仲良く」といったメッセージは、相続人が遺言の内容を受け入れやすくする効果があります。付言事項は法的効力はないため、財産の処分に関する内容は必ず正式な遺言条項として記載してください。
Q 行政書士は遺言書の作成をどのようにサポートしてくれますか?
行政書士は以下のサポートが可能です。①遺言の内容(誰に何を遺すか)の整理、②自筆証書遺言の書き方のアドバイス・チェック、③公正証書遺言の公証役場との打ち合わせ・書類準備、④証人の手配(行政書士自身が証人になることも可能)、⑤遺言執行者への就任(遺言者が亡くなった後の手続きを遺言書に基づいて実施)。なお、弁護士業務に当たる法律相談は行政書士の業務範囲外です。当事務所では初回ご相談を受け付けています。
Q 遺言書がなくても相続できますか?遺言書は絶対に必要ですか?
遺言書がなくても相続は可能です(法定相続分に従った遺産分割協議で行われます)。ただし、相続人全員の合意が得られない場合は遺産分割調停・審判に発展し、解決まで何年もかかるケースがあります。また内縁の配偶者・特別に世話になった人へ財産を残したい場合は遺言書がないと実現できません。遺言書は「財産が多い人だけのもの」ではなく、「自分の意思を確実に残したい人すべてに有効なツール」です。
遺言書作成のご相談
どの種類が自分に合っているか、何を書けばいいかを一緒に考えます。お気軽にご相談ください。
お問い合わせ 090-2713-7500
開田行政書士事務所
〒869-1112 熊本県菊池郡菊陽町武蔵ヶ丘北2丁目16-2
年中無休 9:00〜20:00(Webフォームは24時間受付)
公式情報リンク
遺言書のこと、 まず相談してみてください
「どの遺言書が自分に合っているか相談したい」
「自分で書いた遺言書に間違いがないか確認してほしい」
「公正証書遺言を作りたい。証人の手配はできますか?」
「遺言執行者になってほしい」
遺言書の内容整理・書き方アドバイス・公証役場との調整まで
サポートします。
ご相談受付中。年中無休・オンライン対応可。
開田行政書士事務所 / 〒869-1112 熊本県菊池郡菊陽町武蔵ヶ丘北2丁目16-2
年中無休 9:00〜20:00(Webフォームは24時間受付)
【情報の正確性・免責について】
本記事は民法(相続法)・法務省「自筆証書遺言書保管制度」等の公式情報をもとに2026年8月20日時点で作成しています。法律・制度は改正される場合があります。遺言書の内容・有効性については個別の事情によって判断が異なるため、必ず専門家にご確認ください。本記事は情報提供を目的としており、個別の法的アドバイスではありません。
■ 関連ページ

コメント