特定技能の離職防止とトラブル対応:突然の退職を防ぎ、円満なキャリア継続を叶えるマネジメント(特定技能シリーズ第9回)
特定技能外国人の採用において、経営者様が最も恐れるのが「突然の退職」です。多額の採用コストと時間、そして膨大な手続きを経て入国させた人材が、わずか数ヶ月で「辞めたい」と言い出したら――。これは、多くの企業が頭を抱える最大のリスクです。
第9回では、なぜ彼らは退職を考えるのか、その兆候はどう見極めるべきか、そして「長く働きたい」と思わせるためのマネジメント手法について、実務的な視点から紐解きます。
なぜ、特定技能外国人は離職を考えるのか
離職の理由は一つではありませんが、多くの場合、以下の「3つの要素」が原因となります。
①賃金への不満と将来不安: 「残業代が計算通りでない」「同業他社の方が給料が高い」といった経済的な不満です。特に、特定技能の制度を理解して転職先を探す外国人も増えており、給与明細の透明性が低いとすぐに疑心暗鬼になります。
②人間関係と職場環境: 日本語が十分に伝わらない中での指示出し、上司や先輩とのコミュニケーション不足、あるいは日本独自の慣習に対する適応の難しさです。
③支援の質の低さ: 登録支援機関や会社からのサポートが不十分で、「孤立している」と感じることです。特に、緊急時の対応や生活相談が放置されると、本人の中での「この会社に居続ける理由」が失われてしまいます。
離職の兆候を早期発見する「3つのサイン」
特定技能外国人が退職を決意する前には、必ずと言っていいほど「サイン」が出ます。以下の変化を見逃さないでください。
◇業務上のミスや欠勤が増える: 意欲が低下している兆候です。これまでできていた仕事でミスが増えたり、理由不明の遅刻・欠勤が出始めたら、本人に悩みがある可能性大です。
◇孤立の加速: 休憩時間に日本人社員と交流しなくなり、母国の人々とのコミュニティに閉じこもるようになる場合、職場の人間関係に不満を抱いていることが多いです。
◇登録支援機関や他の外国人との密な連絡: 常にスマホを気にしている場合、他の会社への転職相談や情報収集を行っている可能性があります。
これらのサインを感じたら、即座に「個別面談」を設定してください。感情的に叱責するのではなく、「最近、仕事で困っていることはないか?」「将来どうなりたいか?」と本音を引き出すことが、最大の予防策です。
トラブルを防ぐ「円満な関係」のつくり方
離職を防ぐには、物理的な「賃金・待遇」と、情緒的な「信頼関係」の両輪が不可欠です。
◇給与明細の徹底した説明: 毎月の給与明細を渡す際、どの項目が何のための手当なのか、なぜ今月はこの金額なのかを丁寧に説明してください。この「透明性」が安心感を生みます。
◇「聞き役」を配置する: 現場の上司とは別に、外国人本人と定期的に話せる「相談窓口」を社内に設けてください。小さな不満を爆発させる前に、吐き出せる場所があることが重要です。
◇キャリアの見える化: 「君が将来2号試験に合格すれば、これだけ給料が上がる」「将来的には現場の班長を任せたい」という具体的なキャリアプランを提示しましょう。先が見えない環境に長く留まる人はいません。
万が一の離職時の「法的手続き」を忘れずに
どれほど丁寧に接しても、やむを得ない事情で退職するケースはあります。その際は、必ず法令に則った事務手続きを行ってください。
①入管への届出: 特定技能外国人が離職した場合、受入れ企業は14日以内に「特定技能外国人の離職に関する届出」を地方出入国在留管理局へ提出しなければなりません。これを怠ると、次回の申請時に大きな支障となります。
②転職のサポート: 特定技能制度では、離職した外国人が次の職場で特定技能として働き続けられるよう、離職した企業側にも「転職活動のサポート(情報の提供など)」が求められます。
③未払い賃金の精算: 最後に給与や退職金の未払いがないか、徹底的に確認してください。ここでトラブルになると、ネットの口コミやSNSで「この会社は危険」と拡散され、次からの採用が著しく困難になります。
まとめ:採用は「ゴール」ではなく「関係構築のスタート」
特定技能外国人の採用は、単なる「労働力の穴埋め」ではありません。彼らを一人の「働くプロ」として尊重し、適切にマネジメントすること。これこそが、離職という経営リスクを最小化する唯一の手段です。
次回はいよいよ最終回!「特定技能制度を最大活用するための『戦略的経営』:人手不足をチャンスに変える会社は何が違うのか」について、シリーズの総括としてお話しします。
開田行政書士事務所のご紹介
開田行政書士事務所では、特定技能外国人の定着率向上に向けた人事労務相談から、万が一の離職時の法的手続きまで、法務のプロとしてサポートいたします。
【対応エリア】
熊本県内(熊本市、菊池市、合志市、菊陽町、大津町ほか)はもちろん、日本全国からのご依頼に対応可能です。
【当事務所の強み】
離職トラブルの多くは、「制度理解の不足」と「コミュニケーション不全」から生まれます。当事務所は、建設業等で多くの外国人と接してきた経験から、文化の違いを尊重した円滑な労務管理や、本人の意欲を高める評価制度の構築をアドバイスいたします。
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