自宅兼事務所の「原則禁止」。新基準下での独立した事業所確保と実態調査(在留資格経営管理ビザシリーズ第5回)
「経営・管理」ビザにおいて、事業所の確保は以前から必須要件でしたが、2025年10月の改正以降、その「独立性」の定義が極めて厳しくなりました。かつては居住スペースの一部をオフィスとする「自宅兼事務所」も、明確な区分けがあれば認められるケースがありましたが、2026年現在の実務では、資本金3,000万円規模の事業にふさわしい「完全独立型オフィス」が強く求められています。
1. なぜ「自宅兼事務所」は認められなくなったのか
入管庁が自宅兼事務所を原則として認めなくなった最大の理由は、事業の継続性と実存性への疑念です。
公私の区別の欠如: 資本金3,000万円を投じ、常勤職員を雇用する規模の事業において、生活の場と同じ空間で業務を行うことは、対外的な信用やセキュリティの観点から「不自然」であると判断されます。
雇用の場としての不適切さ: 新基準で義務化された「日本人等の常勤職員1名」を、経営者の自宅に通勤させることは、労働環境として適切ではないとみなされます。
2. 2026年現在の「事務所要件」3つの鉄則
現在、許可を得るためには以下の3点をクリアした物件を確保しなければなりません。
事業専用の賃貸借契約: 契約の目的が「居住」ではなく「事務所(店舗)」となっていること。また、契約名義は「個人」ではなく「法人(会社)」である必要があります(設立前は個人名義で契約し、設立後に法人名義へ切り替える旨の特約が必要)。
物理的独立性の確保: 他の会社や居住スペースと壁で仕切られ、独自の出入口があること。パーティションによる簡易的な区切りでは、3,000万円規模の事業実態を証明するには不十分です。
事業実態に見合った設備: 事務机、PC、電話、複合機に加え、雇用するスタッフのための座席、来客用の応接スペースなどが整っていること。これらは写真撮影を行い、入管へ提出します。
3. シェアオフィス・コワーキングスペースの落とし穴
専用個室が必須: シェアオフィスを利用する場合でも、契約が「専用個室(ブース)」であり、郵便物の受け取りや看板の掲示が可能であることが最低条件です。
バーチャルオフィスは論外: 住所だけを借りるバーチャルオフィスは、実態がないものとして即座に不許可となります。
4. 抜き打ちの実地調査(インスペクション)への備え
2025年の改正以降、入管の調査官による「事務所への実地調査」の頻度が大幅に増えています。
調査のポイント: 実際に経営者がそこで働いているか、雇用したスタッフのデスクがあるか、看板が出ているかなどがチェックされます。
写真との整合性: 申請時に提出した写真と現在のレイアウトが著しく異なる場合、虚偽申請を疑われる可能性があるため注意が必要です。
5. 物件探しの注意点:ビザ取得前の契約リスク
「ビザが下りるか分からないのに、先に高い家賃のオフィスを契約するのはリスクだ」と感じる方は多いでしょう。しかし、現在の実務では「事務所が確保されていること」が審査の前提です。
対策として、賃貸借契約書に「在留資格が許可されなかった場合には解約できる」という条件(停止条件)を盛り込む交渉を行う、あるいは認定支援機関のアドバイスを受けながら、審査の進捗に合わせた内装準備を行うなどの戦略が必要になります。
まとめ
事務所は、あなたのビジネスの「本気度」を物理的に証明する場所です。3,000万円の資本金を投下するに足る、プロフェッショナルな仕事場を構えることが、審査官の信頼を得る最短ルートとなります。
次回、第6回では、最難関と言われる「3,000万円の出所立証」について、マネーロンダリング対策が強化された2026年の最新審査基準を解説します。
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賃貸借契約の条項チェック: 外国人起業家が不利にならないよう、また入管の要件を満たすよう、契約書のリーガルチェックを徹底します。
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