経営者の資格要件。なぜ「3年以上の実務経験」や「修士号」が必須になったのか(在留資格経営管理ビザシリーズ第2回)
2025年10月の改正において、資本金の増額と同じくらい大きな衝撃を与えたのが、経営者本人に対する「人的要件」の新設です。
これまでは、お金(資本金)と場所(事務所)さえあれば、これまでの経歴を問わず誰でも経営者として申請が可能でした。しかし新基準では、「経営のプロフェッショナルであること」を公的に証明しなければなりません。第2回では、この新設された職歴・学歴要件の具体的な中身と、証明のポイントを詳しく解説します。
1. 「3年以上の実務経験」:何がカウントされるのか
新基準では、事業の経営または管理について「3年以上の実務経験」が必要です。
ここでいう「実務経験」には、以下のものが含まれます。
海外での役員経験: 母国の会社で取締役や部長職以上のポストに就いていた期間。
日本での「管理職」経験: 以前の職場で「技術・人文知識・国際業務」ビザなどを持ち、部下を持つマネージャーとして働いていた期間。
準備期間の合算: 日本での特定活動ビザ(スタートアップビザ等)を利用して起業準備を行っていた期間も、実務経験として算入可能です。
単なる「一従業員」としての期間は含まれません。意思決定に関与し、組織を動かしていたことを、在職証明書や組織図を用いて証明する必要があります。
2. 「修士号・博士号」:学歴による代替
実務経験が3年に満たない場合でも、以下の学位を有していれば要件を満たすことができます。
経営管理に関する学位: MBA(経営学修士)や専門職学位など、経営に直結する高度な知識を有していること。
事業分野に関する学位: これから日本で行う事業の内容(例:IT事業なら情報工学、医療ビジネスなら医学・薬学など)に関連する修士以上の学位。
海外の大学院を卒業している場合、学位記の写しだけでなく、その内容が申請する事業にどう活かされるのかを論理的に説明することが求められます。
3. なぜ「人的要件」が追加されたのか
入管庁が求めているのは、「失敗しない経営者」です。
3,000万円という巨額の資本金を投下しても、経営の素人が事業を始めれば、短期間で倒産し、従業員が路頭に迷うリスクが高まります。経営者としての基礎体力をあらかじめ確認することで、日本経済への安定的かつ長期的な寄与を担保しようとするのが、今回の改正の真の狙いです。
4. 証明書類のハードル:口頭での説明は不可
「私は母国でずっと経営者でした」という主張だけでは不十分です。以下の客観的証拠を揃える必要があります。
在職証明書: 勤務期間、役職名、具体的な業務内容(部下の人数や決裁権限の範囲)が明記されたもの。
過去の納税証明・給与明細: その役職に見合った報酬を実際に受け取っていた証拠。
当時の組織図: 自分が組織の中でどのようなポジションにいたかを視覚的に示す資料。
特に海外の古い書類を遡って収集するのは時間がかかるため、申請の準備は「お金の準備」よりも「経歴の整理」から始めるべきだと言えます。
5. 経過措置の注意点
現在「経営・管理」ビザを持っている方は、2028年10月16日まではこの人的要件を満たしていなくても更新が可能です。しかし、それ以降は現在の経営者も新基準の対象となります。
「実務経験が足りない」という方は、この猶予期間中に「日本での経営者としての実績」を積み上げ、3年のカウントを完了させておく戦略が必要です。
まとめ
資本金3,000万円を用意できても、この人的要件でつまずくケースが2026年現在は急増しています。「経営者としての資質」を紙の上でどう表現するか。それが新時代の経営・管理ビザ取得の鍵となります。
次回、第3回では、もう一つの新設要件である「日本語能力(N2相当)」について、経営者自身と従業員、どちらが持っていれば良いのか、その運用実務を解説します。
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