日本語能力(N2相当)の壁。経営者自身または従業員に求められる言語能力(在留資格 経営管理ビザシリーズ第3回)
2025年10月の法改正において、資金面や職歴と並んで申請者を驚かせたのが「日本語能力」の要件化です。これまでは、通訳を介せば日本語ができなくても経営ビザの取得は可能でしたが、2026年現在の新基準では、「事業を適正に運営できるだけの言語基盤」が厳格に求められるようになりました。
第3回では、この日本語要件の具体的な基準と、経営者自身が満たせない場合の「代替案」について詳しく解説します。
1. 求められるのは「JLPT N2(B2相当)」以上の能力
入管が提示する標準的な基準は、日本語能力試験(JLPT)のN2レベル以上です。これは「日常的な場面で使われる日本語に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる」レベルであり、ビジネス上の契約交渉や行政手続きを自ら、あるいは主体的に理解して行えることを想定しています。
試験による証明: JLPT N2のほか、日本留学試験(EJU)やBJTビジネス日本語能力テストなど、公的に認められた試験でのスコア提出が求められます。
学歴による証明: 日本の大学や専門学校を卒業している、あるいは日本語で授業を行う海外の教育機関を卒業している場合は、試験免除の対象となります。
2. 経営者自身が日本語を話せない場合の「救済措置」
起業家の中には、世界を股にかけるビジネスマンも多く、必ずしも日本語が堪能とは限りません。その場合、以下の条件を満たすことで要件をクリアできます。
常勤の「通訳・翻訳兼実務スタッフ」の雇用: * 前回の第1回で解説した「常勤職員1名以上」のスタッフが、JLPT N2相当以上の日本語能力と、経営者の母国語(またはビジネス公用語)を完璧に操れる必要があります。
この場合、経営者と従業員の間のコミュニケーションが円滑であり、日本の法令や商習慣に基づいた経営が「従業員のサポートによって確実に行えること」を、組織図や業務フロー図で証明しなければなりません。
3. なぜ日本語能力が「必須」になったのか
背景には、経営者が日本の法律やルールを理解していないことに起因するトラブルの急増があります。
法令遵守(コンプライアンス): 労働法、税法、社会保険制度などの重要な通達は、依然として日本語が中心です。これらを理解せず「知らなかった」で済ませる経営者が増えたことが、厳格化の要因です。
地域社会との共生: 日本で事業を継続する以上、取引先や地域社会との意思疎通は不可欠です。「言葉の壁」を理由に孤立し、事業が立ち行かなくなるリスクを排除する狙いがあります。
4. 審査で見られる「実態」:面接の可能性
書類上で「N2合格」と書いてあっても、あるいは「通訳を雇う」としていても、入管から実地調査や面接を求められるケースが2026年は増えています。
経営者への直接質問: 簡単な日本語での受け答えを求められた際、全く理解できないようであれば、「本当にこの計画書を書いたのは本人か?」「事業をコントロールできているのか?」と、経営実態そのものに疑義を持たれます。
従業員の能力確認: 雇用した日本人スタッフや通訳スタッフが、実際に経営をサポートできるだけの語学力と実務知識を持っているか、履歴書だけでなく詳細な職務説明が求められます。
5. 2028年までの「経過措置」と学習戦略
既存の「経営・管理」ビザ保持者は、2028年10月まではこの要件も猶予されます。しかし、更新のたびに「日本語学習の進捗」を問われるケースも出てきています。
今すぐ始めるべき対策: 言語習得には時間がかかります。2028年の完全移行時に慌てないよう、今から試験対策を始めるか、あるいはN2以上の能力を持つ「右腕」となる日本人スタッフの採用・育成に動く必要があります。
まとめ
「言葉ができなくてもお金があればいい」という時代は、2025年の改正で完全に幕を閉じました。現在の経営・管理ビザは、日本社会に深く入り込み、ルールを理解して共生する「覚悟」を問う資格へと変貌しています。
次回、第4回では、新基準において作成がさらに複雑化した「事業計画書」と、新たに義務化された「専門家による確認制度」について解説します。
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スタッフ採用の法務アドバイス: 要件を満たす常勤職員の選定基準や、雇用契約における語学能力の明文化など、トラブルを防ぐための労務法務をサポートします。
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